ジェイミー・フォード著 前田一平[訳] 集英社文庫
Hotel on the Corner of Bitter and Sweet by Jamie Ford
"ダイナミックかつ情熱的なラブストーリー"
物語は、第二次世界大戦の頃1942年頃のシアトル、中国人街と日本人町が接するコーナーにパナマホテル(現存するとのこと)があり、白人ばかりの小学校にただ二人の東洋人として通学していた中国人ヘンリー・リーと日本人(実際は日本語の出来ないアメリカ人であるが)ケイコ・オカベとの40年の長きにわたるラブストーリーである。
そこに、ヘンリーと生涯の友となるジャズのストリートプレーヤー(サックス)のシェルドンが絡み、全体にジャズの素晴らしいバックグラウンドが奏でられているような気持ちよさを加えている。
物語は、二人が出会った40年後1986年に長く閉鎖されていたパナマホテルが売却され、地下室に納められていた日本人の個人所有物(戦時中敵国民として強制収容された多くの人々が残した)が明るみに出たことに端を発している。
そこで、ヘンリーは、一流プレーヤーであるオスカーホールデンとシェルドンがジャズクラブでヘンリーとケイコのために即興で演奏した"路地裏の野良猫ステップ"のレコードを探す。
1942年のラブストーリーが 1986年にジャズレコードを軸に展開するという素晴らしい発想に賛辞を送りたい。
また、前田一平氏の翻訳による日本語表現は"極めて適格"で感動的な物語を忠実に(あるいは原作以上かもしれない)再現していることにも感動を覚えた。
余り細かなストーリーを述べるのは"営業妨害"となるといけないので控えるが、とにかく全体にわたって実に感動的である。
私は、通勤中にも読書をするが、涙がとまらず困ったことも数回ではなかった。
お進めの一冊である。