ふたたび読む "最後の診断"The Final Diagnosis by Arthur Hailey :最後の診断である病理診断 現在に照合して

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アーサー・ヘイリー著 永井淳訳   英文原本1959年版 日本語訳昭和50

 

先日、偶然に部屋の書庫を眺めていたところ"最後の診断"が目に入り、再度読んでみた。

 

最後の診断 表紙.jpg 

ジョーゼフ(ジョー)・ピアスン 病理部長

マイク・セドンズ  医学部学生

ルーシー・グレンジャー  整形外科医

デーヴィッド・コールマン  新任病理医

ケント・オドーネル  外科部長

 

場所:スリー・カウンテイズ病院  

所在地:ペンシルベニア州バーリントン

 

 

 

 

ジョー・ピアスンは、アメリカ型の病理部長で、いわゆる病理診断および臨床検査医学をカバーしている。これまで、血液型不適合輸血による、幼児の赤芽球症Erythroblastosisでの死亡、赤痢などの重篤な感染症が院内感染、など多くの問題の責任を問われていた。

話のトピックの一つが病理診断である。

医学部学生マイクのガールフレンド、ビビアンが発生した 膝の腫瘍を ピアスンは骨肉腫と診断し、新任の若手病理医コールマンは良性と診断した。病理診断のコンサルテーションをボストンとニューヨークに出したが、両者でも意見が分かれる。病理診断の結論は、ピアスンが責任を取る形で骨肉腫の診断となった。ルーシーがビビアンの足の切断を施行する。その足の"切り出し"[外科手術にて摘出した検体を顕微鏡標本にする作業]をしていたコールマンは腫瘍が悪性であることを確認する。

 

1959年にアーサー・ヘイリーが書いた本著書。私が14歳の時に米国で出版されたことになる。私は1970年から米国で病理の研修始めて、アメリカ型の病理診断を習得したが、その頃体験した通りの内容である。この30年程の間に、病理診断を取りまく技術、機械化など著しい変遷を遂げてきた。現在は、病理診断に難渋する際の確定診断、あるいは予後・治療方針のために、しばしば遺伝子の解析などが行われる。このような背景にあって、骨肉腫は、悪性度の極めて高い腫瘍の一つであり、現在でもその診断が難しいことが良く知られる。多くの悪性腫瘍の詳細が明らかにされてゆく中で、骨肉腫も徐々にその遺伝的背景が明らかに去れている。American Cancer Society Do we know what causes osteosarcoma? Inherited gene changes. Acquired gene changes  Last Medical review 01/08/2013)

 

医学はこの50年間に目覚ましい発展をとげたが、このように、アーサー・ヘイリーが取り扱った病理診断の題材には、今でも新鮮さを感ずる。著者に敬意を表する次第である。  

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