中川織江著 セッシュウ [講談社]を読んで
私達の年代は、"戦場にかける橋-The Bridge on the River Kwai-""で"早川雪洲を知った、" "世代"だが、今回この著に接して、早川雪洲が早くに渡米し役者として認められ、ハリウッドのトップスターに上り詰め、米国、日本、パリに移り住み、常に世界トップの俳優として活躍し続けた事を知り、非常に感銘を受けた。
早川雪洲の人生は順風満帆ではない。初ヒットであった"チート"は、米国で空前のヒットとなり、一躍米国でトップスターとなったが、東洋人蔑視のそしりを受け、日本では上映されなかった。
しかし、次々に映画を作成し、出演する。そのエネルギーは目を見張るものがある。日本にも家族を連れて帰国するが、急遽家族を残して、単身パリに移り住み終戦を迎える。それも凄い。ヨーロッパでも、米国で活躍する日本人として歓迎される。
雪洲には、米国人Ruthと日本人スズとの間に計3人の子供を設けるが、鶴子は最後まで自分の子として育てる。戦時、終戦、戦後と日本で3人の子供と留守宅をまもる。後に、三人とも、二人の意志を受け、それぞれ日本で活躍する。この三人の子供を育てることも、雪洲への愛情表現とした鶴子の生きざまにも感動する。
自由奔放を"絵に描いたような" 雪洲人生だが、"常にトップ"として輝き続け、世界を駆け続けたそのパワーは"凄い"。ハリウッドでは、"だれにも負けない"豪邸グレンギャリ城を建築した。これは日本領事館もレセプションなどに使用したほどであった。
本書からは、"苦労から生まれる活力"、国境を感じさせない活動力、また人間の冷たさ・暖かさ、愛情など、スケールの大きい人間の生きざまが凝縮されている。
著者の中川織江氏の、綿密な調査から描き出される"セッシュウ"像に魅了される。
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