昨年12月のベトナムチョーライ病院病理部長Tran Minh Thong先生の来日を機会にこの本を読みなおした。
王国の皇太子で次期ベトナムの王になるはずであったクオンデ候に焦点をあわせている。
クオンデ候は、当時のフランス政府に国外退去を命じられ、長く日本に滞在した。
熱心に支援したのは、熊本県天草の出身の松下光廣氏であった。
その間に、犬養毅も大隈重信なども積極的に支援した。
当時天草からベトナムに多くの人が移住し商業における日本の手腕をふるっていた。
天草出身者が多かったのも、熊本出身の私として興味が持たれた。
クオンデ候は、一度ベトナムに戻るものの、再度退去命令が出され、再び日本の地を踏み、そのまま日本で故郷の家族との再会を夢見ながら日本で一生を終えることとなった。
当時、ベトナムではハノイには日本人町が出来ており、旅館もあった。
出向いた日本人たちは 極めて"外向き"であり アジアでの通商に積極的に携わっていた。
ベトナムは現在でも大変親日的であり、アジアの中でも親交を深めることのできる国のひとつであり、その際に昔にこのような事実があったことを知ることは大切なことと感じている。
著者の牧氏は、記者として現地にも赴き取材をし、その記述も心打つものがある。わが国とベトナムの歴史の一面を知る傑作の書である。