2013年4月アーカイブ

6月23日に科学技術館にてかに座.jpg

 

来る623()に科学技術館の御協力で、病理診断を小学5-6年生20名の諸君と一緒に体験する機会を得て、"ワクワク"しています。

 

いろいろな疾患の中で、比較的子供たちにも分かり易いのは、癌Cancerだと思い、癌細胞を題材とすることにしました。ちなみにCancerとはかに座のことです。なぜでしょうか?

 

 

 

画像を見ながら、癌とは"どういう病気か?"をお話した後に、大腸の癌細胞と正常細胞を見て、観察しスケッチをしてもらうつもりです。

"正常の大腸組織と癌の組織の"見え方の違い"を分かってくれるだろうか? また、癌細胞は正常細胞に比べ、核が大きく形も不揃いなところも分かってくれるだろうか?" など気になるところです。 

結腸癌.jpg

組織の画像.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

この研究体験を通して、癌という病気を"形"で把握して貰いたいと思います。そしてそのような形をした癌細胞は、どのようにして"浸潤""転移"するのか? 治療の基本は何か? なども考えて貰うつもりです。

何よりも期待しているのは、小学生の諸君が"病理医"という医者と触れ合って、病理診断という医療行為を身近に理解してくれることです。受講生の中から将来の病理医が生まれるかもしれない!などとも思いを馳せています。

 

"いつも感じられる"ベテラン病理医も若手病理医も総合した熱気

 

102th USCAP.jpg

March 2-8, 2013 Baltimore Convention Centerにて開催されたUSCAPに本年も参加した。私は、IAP関連の会議および雑誌の編集会議などに出席しつつ、ポスター演題を発表し Special course "Practical guide to molecular testing in cancer" を受講した。

 

例年通り、3月2日()・3日()Companion meetingsが行われた。

私が出席したEndocrine Pathologyは3月2日に行われた。そのプログラムはWebで見ることが出来るばかりでなく、発表された内容のハンドアウトを見ることが出来る。PPTスライドもあり、きわめて有用である。

Special Course "Introduction to Molecular Pathology for the Practicing Pathologist:

Technology, Assay interpretation, and Pitfalls

Special Course "Careers in Investigation Pathology: The Next Generation

Special Course "Advanced Molecular Pathology"

Special Course "Basic Principles in Cytology"

ここで見られるように、Molecular Pathologyの教育に力を入れていることが明白である。

 

一般演題はProffered papersPoster presentationに分けられ、ポスター発表が圧倒的に多い。今回は、演題の採択率は約70%と言われている。

水曜日からLong course 1コース, Short Corse60コースが行われた。Long courseは"Soft tissue tumors-A modern Integrated and Practical Approach to Diagnosis and Classification"であった。

参加者は、第一日目で4400名と報告された。最終的には5000名を超えたのではないだろうか? 

いつもながら感じるのは、ベテランから若手まで一貫して病理診断への情熱である。

"Passion Pathology"と言うべき熱気を感じ取ることが出来る。

 

学会2日目に開催され定例となっているJapan Night70名を超える出席者があり、国内外で活躍する日本人病理医の意見交換の場として定着してきている。

USCAPの以下のWebsiteで、プログラムなどレビューすることが出来る。

  USCAP HP.jpg

 

また、関連した教育プログラムの広告もあり、若手の勉強にとって有用な情報である。

103回は、2014年3月1日から7日まで San Diegoにて開催される。

 中川織江著 セッシュウ [講談社]を読んで

 

私達の年代は、"戦場にかける橋The Bridge on the River Kwai-""で"早川雪洲を知った、" "世代"だが、今回この著に接して、早川雪洲が早くに渡米し役者として認められ、ハリウッドのトップスターに上り詰め、米国、日本、パリに移り住み、常に世界トップの俳優として活躍し続けた事を知り、非常に感銘を受けた。

 

 千葉の網元に生まれ、早々と日本での生活に見切りをつけ、21歳で渡米を決心する。父親との約束通りにシカゴ大学に入学するが、もともと芝居に親しんだ家庭環境もあって、進路変更してカリフォルニアで日本人の劇団に加わりそのキャリアを開始する。その途上で一生の伴侶となる川上鶴子と遭遇する。数奇な運命をたどった鶴子は、日本から劇団一座として渡米し、現地で劇団が経済的な窮地に追い込まれると、置き去りにされるごとくに日本人に託される。その境遇にもめげずに、日本人初のハリウッド映画スターとなる。既に米国でスターであった鶴子は、雪洲の才能を信じてハリウッドスターに引き上げる。この二人の生きざまは、人生の偶然性、出会いの大切さ、生きる力の素晴らしさ・凄まじさ、そして愛の素晴らしさ、などをまざまざと感じさせる。

 

早川雪洲の人生は順風満帆ではない。初ヒットであった"チート"は、米国で空前のヒットとなり、一躍米国でトップスターとなったが、東洋人蔑視のそしりを受け、日本では上映されなかった。

しかし、次々に映画を作成し、出演する。そのエネルギーは目を見張るものがある。日本にも家族を連れて帰国するが、急遽家族を残して、単身パリに移り住み終戦を迎える。それも凄い。ヨーロッパでも、米国で活躍する日本人として歓迎される。

雪洲には、米国人Ruthと日本人スズとの間に計3人の子供を設けるが、鶴子は最後まで自分の子として育てる。戦時、終戦、戦後と日本で3人の子供と留守宅をまもる。後に、三人とも、二人の意志を受け、それぞれ日本で活躍する。この三人の子供を育てることも、雪洲への愛情表現とした鶴子の生きざまにも感動する。

 

自由奔放を"絵に描いたような" 雪洲人生だが、"常にトップ"として輝き続け、世界を駆け続けたそのパワーは"凄い"。ハリウッドでは、"だれにも負けない"豪邸グレンギャリ城を建築した。これは日本領事館もレセプションなどに使用したほどであった。

 

本書からは、"苦労から生まれる活力"、国境を感じさせない活動力、また人間の冷たさ・暖かさ、愛情など、スケールの大きい人間の生きざまが凝縮されている。

著者の中川織江氏の、綿密な調査から描き出される"セッシュウ"像に魅了される。