スウィング・ジャパン:日系米軍兵ジミー・アラキと占領の記憶
秋尾沙戸子著 新潮社 を読んで
本書は、日系帰米二世James Tomomasa Araki -Jimmy Araki- の生い立ち、戦時中の収容所でジャズを覚えたこと、戦後の日本に駐留して日本のジャズマンに多いなる影響を与えたこと、帰国してハワイで日本文学を研究し学部長になり文学に生きたについて、念入りな調査をもとに、極めて当時のアメリカ、日本の様子および人々の気持ちが手に取るようにわかるように書かれている。極めて読みやすい。
本書の前半は、戦前、戦中、戦後を通して米国在住の日本人の苦労など手に取るように理解できるように史実を反映して、詳細がつづられている。私は、一ジャズファンとして、本書を読み、如何にしてアラキがジャズを演奏するようになり、わが国でどのようにして演奏家を育て(影響を与え)、またジャズ一流プレーヤーのどのような経緯で(心境で)文学者としての人生を選び大成したのか、など興味を持って読んだ。
米国、日本で非常に有名なジャズマンの名前が沢山出てきて、それだけでも親しみを覚える。
アラキは、最初に楽器Jazzを演奏し始めたのは戦中の収容所内と書かれている。
ピアノ、サックスその他多くの楽器を自由にこなす、私から見れば"天才"と思われる。
本格的にJazzを聞いたのは、1945年3月ニューヨークでチャーリーパーカーを聞いた時とされる。
デイジー ガレスピー、マイルスデービスなど なじみの名前が続々と出てくる。そのJazzの技術、センスを持って、戦後の荒廃した東京に米軍の一員として駐留して日本のジャズマンを育てた。勿論本職はニセイリンギスト(日本を駆使できる二世)として膨大な事務作業をしたのである... 日本での有名なジャズマンの名前が数多くでてくる、南里文雄、松本英彦、ジョージ川口、ティーブ・釜萢、日野皓正など、、わが国での多くのジャズマンに影響を与えたことは、ジャズファンとして感慨深い。
周囲は、米国へ帰国後パーカーとジャズを演奏する人生を送ると思われたが、日本文学それも中世の幸若舞に興味を持って論文を書いてその分野の第一人者となる。その業績でハワイ大学文学部の教授、学部長としてアカデミズムの人生を送る。川端康成、三島由紀夫とも親交があった。
秋尾沙戸子氏の素晴らしい文章と話の進め方のうまさで、引き込まれて読んだが、数奇な運命をたどりながら、ジャズと日本文学に生きた"天才"の生涯に"日米にまたがる人生"を"ステキに"生きた男のロマンを充分に感じることが出来た
コメントする