若い学徒諸君に薦めたい一冊  "創造への大きな夢を持つこと"

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梅原猛著 「学ぶよろこび ー創造と発見ー」 朝日出版社 2011331日初版第一刷

 

本書は、85歳となった著者によるもので3部よりなっている。

学よろこびカバー.jpg第一章「少年の夢」、68歳のときに高校生向けの講演

第二章「生い立ちの記」は、56歳のときに記した著書「学問のすすめ」よりの抜粋である

第三章「創造への道」は、最近記したものである。

 

第一章では、夢を持つことを強調し、創造には夢が大切であることを力説している。これまで、夢を実現させた人の多くは、"心に傷を持った人"であり、傷は深い程良いという。

例として、わが国で初めてノーベル賞を得た湯川秀樹博士、豊田自動車の創設者豊田喜一郎氏が挙げられている。湯川博士は、秀才の一家に育って学業は目立たない存在であった、父親は高校への進学ではなく高等商業学校への進学をかんがえた。それをいさめたのが中学校の校長であり、その進めで高校へ進学し、後に大発見をすることになる。豊田喜一郎氏は、母親と速く別れてしまい、それが傷となって後に自動車への道(父親の織機ではなく)で大成することになった。梅原博士は、早くに母親と死に別れ、伯父夫婦に育てられ、その境遇に悩みながら哲学の道に進み独自の夢を達成した。そして、いまだに更なる夢を伸ばしている。

 

第二章では、氏の生い立ちから(父の兄:伯父の子として育てられ)、その養父の影響、そして青春時代の変遷が書かれている。もともと余り勉強好きでなかったが、養母を喜ばせようと死に物狂いの勉強の結果頭角を現すことになり、その後の哲学への道の原動力になる。

 

第三章では、梅原博士の学者としての生活を語っている。氏が人間の一生を考える際に、ツァラトゥストラはかく語りき}に語られているフリードニッヒ・ニーチェの精神の三種の変貌を紹介している。精神は、最初ラクダの形で現れ、耐える精神の代表している。次はライオンの戦う心がいろいろな知識を積極的に習得する上で必要となる。最後に創造のために、ライオンは小児にならなくてはならない。創造には、小児のような遊びの精神が必要としている。忍耐-戦い-創造の推移が重要と説かれている。この流れを受けて、氏はいろいろな変遷を経ながら哲学の道を創造したことになる。

 

氏は、最後に85歳を迎えた氏が、まだ新しい哲学の創造に情熱を燃やしていることの素晴らしさに胸打たれる。

 

私の研究人生と照らし合わせてみて、共感することも多い。是非若い学徒にお薦めしたいほんである。読みやすい内容であり、各々の育った環境も考えながら、創造への意欲がわくことを期待している。

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