紅梅(津村節子著 文芸春秋社 2011年7月31日)を読んで

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紅梅 津村節子.jpg津村節子氏が夫である故吉村昭氏の亡くなる前の闘病生活とそれを支えた夫婦の愛情が良く表れている。吉村氏は、舌癌と膵臓癌にかかり、その闘病生活は像絶なものであり、"育子"として描かれる津村氏の看病の仔細には胸を打たれるものがある。

吉村昭氏の小説は、これまで多くを読んで感動していたので、今回の"紅梅"もそれを思い出した。これまで私が、読んだのは、アメリカ彦蔵、大黒屋光太夫、島抜け、敵討、夜明けの雷鳴、暁の旅人、死顔などであり三陸海岸大津波は311日の震災とともに脚光を浴びている。

アメリカ彦蔵、大黒屋光太夫はそれぞれ難破という偶然からアメリカ、ロシアでの数奇な運命を描いた小説で私にとって極めて灌漑深かった。彦蔵は米国に帰化して、始めてアメリカ大統領にあった日本人となり、光太夫は日本に帰国するためにSt.Petersbergにいる女王エカテリーナにあっている。壮大は構想で、いずれも、その歴史的検証が綿密になされて書かれたことが良く推察されるし、"紅梅"にも記載されている。

それに比べて、津村節子氏の小説は、余り多くは読んでいないが、新潟での薪窯で日曜雑記を焼き続ける家族愛を描いた"土恋"は読みやすい文体で愛情が素直に伝わってくる。

紅梅は、長い本ではないが、私が最近感銘を受けた一冊といえる。

 

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