2010年2月アーカイブ

カリフォルニア.jpg昨年12月初旬に、一週間USCに滞在し、1年生(良く知られるように、米国では皆学士入学者である)での病理学教育に臨床教授Clinical Professorとして参画した。米国では、日本と異なり、"病理医不足"は余り声だかには、叫ばれていない。私の経験でも、興味ある症例を"病理学"という立場で見る、医療の中で、病理医Pathologistsが担う役割が明確にされている、給与が良い、night callがない、などの利点に魅力を感じて病理医になる医学部卒業生も多い。私のホームページでも書いたが、病理医の活躍する場所が、大学での病理診断科、病院での病理診断科、個人の開業(グループで病院内で)などその形態も多彩である。そのような背景の米国医学部での病理学の教育は、私のスキルを試すことと、米国での教育システムを我国の教育に生かすようフィードバックすることに興味を持った。

 

学生は一学年140名以上、私は腫瘍Neoplasiaを他の教員(全部で7)と一緒に担当した。

教育の仕組みは、以下の通りである。Neoplasiaは全部で4回行われる。

 

午前8時 担当教員打ち合わせ Neoplasia責任者からの教材Website説明

 

午前9―10時 Neoplasia責任者による全体講義

Didacticな講義でRobbinsの教科書を主体にかなり詳細の講義を行う

講義資料は、Websiteで見ることが出来、講義中にもPCを見ながら聞いている学生もいる。配布資料などはない。

 

午前10―12時 7グループに分かれてtutorによるCase study あらかじめ担当者がWebsiteに挙げてある教材を用いて症例を学生が説明する。「Any volunteer?」と言うと学生がどんどんと進めて行く。その後で同じWeb教材に説明をいれた資材でtutorが説明する。我国に比べて学生からの質問が多くinteractionをしている間に時間が過ぎて行く。学生の理解を深めながら進む工夫がいる。特に、USCの場合は一年次に病理学を教育することになるので、形態学の理解の確認が重要となる。

 

ちなみに、学生は全て学士で平均年齢は26歳とのことであった。

出席は講義もcase studyも取らない。学生はWebsiteで予習復習が出来る。午後は、自由な時間として学生にゆだねられている。Case studyも自分の好きなグループに加わることが出来るので、教員も学生を維持して行くべくモチベーションがかかる。

米国では、教育効果を挙げるべく工夫がなされている。

 

DSC01635-2.jpgのサムネール画像3年生以上になっておられる学生諸君は、病理学Pathologyを学ばれたことと思います。

 はじめに疾患を"肉眼、顕微鏡像"などで学ばれたことでしょう。病理学の何に興味を持たれましたか? 癌細胞は、不揃いで核が大きい!なぜでしょうか?

 

 ここでは、諸君が学んでいる病理学が実際の医療にどのように生かされているかをお話ししたいと思います。ホームページでは、病理学の中には、組織診断、細胞診断、迅速診断などがあるとお話ししています(まだの方はお読みください)。この診断はをする医師を病理専門医と言って日本病理学会が認定しています。臨床研修の後、4年間の病理診断にかかわる専門教育を受けて認定試験に合格して病理専門医となります(病理医ともいわれます)。以下の2点が大切です。

 1.病理診断科は厚生労働省の認める診療標榜科(病院の看板に他の診療科と一緒に掲げる)である。

 2.病理診断には、病理専門医による診断体制が出来ている病院には、病理診断に対し診療報酬が国から支払われる。この際に、プレパラート(組織切片の載ったガラススライド)の標本作製に対しても、診断料とは別に支払われる。この2点が、いわゆる検体検査(尿、血清など)から分離され、支払い項目第13部「病理診断」となった。

 この2点が整備されたのが、2008年です。現在更に、その環境整備が進んでいます。

 この2点が整備されたことにより、病理医の立場も確固たるものとなり、病理医を雇用する際の病院へのモチベーションにもつながることになりました。

学生時代に興味を持った病理学に対し職業としての受け皿が出来たことが極めて大きいと思います。多くの医学部で、高学年の医学部学生に、病理診断の病院実習クリニカルクラークシップのカリキュラムが組まれています。私がここで、短く述べたことを是非実感して下さい。

 何事にも"なぜか"の疑問と興味を持って学ぶことは重要です。その興味を、病理診断の実力に反映させて、病理医として医療の一端を担うことは素晴らしいことと思いませんか?